僕ら臨床医はいろいろな学会に入っています。そして学会認定医とか専門医などの資格を持って、肩書きに書いていたりします。この専門医を維持するためには学会講演会に参加したり、教育講演会に参加したりする必要があるわけです。普段、外来診療をしていると、なかなか休診にして学会参加が難しかったりするのですが、最近は学会の現地に行かなくても、オンラインで聴講できることが多くなっています。
今週日曜日は、そんなシステムを利用して、内科学会の生涯教育講演会にオンラインで参加しました。その中で皆様にお伝えしたいことを、備忘録としてこのブログに書いてみたいと思います。
心原性脳梗塞は症状が重くなることが多い
脳梗塞には大きく分けると①ラクナ梗塞、②アテローム血栓性梗塞、そして③心原性梗塞があります。
①ラクナ梗塞:簡単に言うと、脳の深い場所に発生する直径15mm以下の小さな脳梗塞のことです。 脳の奥には、太い血管から枝分かれした穿通枝(せんつうし)と呼ばれる細い血管があります。 この穿通枝の先が詰まるのがラクナ梗塞です。ラクナ梗塞は、ダメージを受ける部分が小さいので症状が現れないことが多く、無症候性脳梗塞とも呼ばれています。
②アテローム血栓性梗塞:脳を養う太い血管の根元が動脈硬化や血液中のコレステロールが溜まることで狭くなり、そこに血の固まりができ、詰まります。
③心原性梗塞:心原性脳塞栓症は心臓内でできた血栓が脳を栄養する血管を閉塞して起こる脳梗塞です。他のタイプの脳梗塞と比較して前触れなく突然発症し、梗塞巣が広範囲で重症になりやすいという特徴があります。血栓ができる原因としては、心房細動が最も頻度が高く心原性脳塞栓症の約 7 割以上を占めます。脳浮腫による脳ヘルニアや出血性梗塞や誤嚥性肺炎などを合併しやすく、 他のタイプの脳梗塞より死亡率が高いです。
心原性脳梗塞の原因は心房細動であることが多いものの気付かれていない?
そうなんです。今回の講演でも強調されていたのはここです。脳梗塞で入院した患者さん。原因として心房細動からの心原性と判明した人のうち30%はそれまで心房細動が見つかっていなかった患者さんでした。70歳台でも25%、つまり4人に1人は自分がそれまで心房細動があることさえ知らないのです。
また、逆に80歳台になると、脳梗塞で入院した時に、80%の人はそれまでに心房細動を指摘されていました。が、心房細動に対する抗凝固療法、いわゆる血液をサラサラにする治療、これが大事なのですが、高齢であるがためか、出血のリスクを恐れて20%の人しか行われていないという結果でした。
脳卒中による寝たきりや死亡を減らすには
ということで、心房細動対策が不可欠ということになります。
ま、ここからは当院のちょっとしたアピールにはなりますが、循環器内科(心臓の専門家)の医師が月曜午後と水曜午後に外来をおこなっております。心房細動を確認するための24時間心電図(ホルター心電図)や、心臓の動きを評価する心臓超音波検査なども行っています。
日頃から、なんか脈が乱れる時がある(お酒を飲んだ後や疲れている時など)などの気になる症状がある方はご相談ください。