昨今のマイコプラズマ感染症の流行により、日本呼吸器学会、日本感染症学会、日本化学療法学会、 日本環境感染学会、日本マイコプラズマ学会の5学会より合同で「マイコプラズマ感染症(マイコプラズマ肺炎)急増にあたり、その対策について」の提言が出され、マイコプラズマ肺炎に関する一般の方及び患者向けへの啓発・説明並びに医療者向けの留意点が示されました。今回、その提言を踏まえて簡単にブログでもまとめたいと思います

マイコプラズマ感染症とは

マイコプラズマ感染症は、マイコプラズマという細菌による感染症で、様々な症状をきたします。現在、流行しているマイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)と呼ばれる菌による呼吸器感染症で、一般的な肺炎と異なり、学童期から成人にみられ、高齢者には少ない感染症です。ほとんどが軽症で、自然に治ることもありますが、ごく稀に重症化することがあります。現在の流行は最後に流行した 2016 年の流行を超える流行となっています。

症状はどんな症状?

マイコプラズマ肺炎では、発熱、倦怠感、頭痛、咽頭痛などの症状がではじめて、数日後に、咳嗽(せき)が出てきます。せきは、痰を伴うことが少ない乾いたせき(乾性咳嗽とよびます)が特徴で、解熱した後も長く持続することがあり、「長引く頑固なせき」と表現されます。ただし、これらの症状だけからマイコプラズマ感染症を診断することは困難です。

乾いた咳が中心で、夜も眠れないといった状況は、マイコプラズマを疑いますね。もちろん、風邪が長引いて咳がとまらないということのほうが頻度的には多いんですけどね。

感染経路は、新型コロナウイルス感染症のように、 せきやくしゃみの飛散から感染が拡がる、いわゆる飛沫感染が主体です。潜伏期は2~3 週間で、患者と濃厚に接する家族内、もしくは、職場内などの小集団でしばしば拡がりますが、インフルエンザのように短期間で地域での大規模な感染拡大が起こることは稀であるとされています。ただし、学校で流行を引き起こし易いことから、子供が学校で感染し、家庭にもちこむことによる家族内感染事例も多く発生しています。

診断方法は?

病原体であるマイコプラズマを検出する方法として培養やPCR検査もありますが、結果が出るのにある程度時間がかかるため、クリニックでの診断方法としてはあまり使いません。インフルエンザやコロナのように15分ほどで判定できる抗原検査は販売されていて、こちらを診断に使うことも多いでしょうか。ただこの抗原検査も口を開けてもらって、奥の方をぐりぐりっとして検査をするのですが、肺炎マイコプラズマは下気道(気管支)で増殖するため、上気道(鼻の奥や喉のあたり)の菌量は下気道の約 1%以下と言われていて、いずれのキットも咽頭拭い液を検体として測定することから、偽陰性が多くなるんですよね。

なので、肺炎を疑えばレントゲンを撮って、マイコプラズマ肺炎があるかを確認する、周囲で同様の症状の家族などがいないか確認する、夜も眠れないような空咳が続いているかなどの状況を総合的に判断して診断しないといけないんですよ。

マイコプラズマ感染症の治療法は?

他の肺炎と鑑別をして、マイコプラズマを考えたら抗生剤投与を行うのです。これまで第一選択はマクロライドという系統の抗生剤を使用するのですが、最近はこの種類の抗生剤に耐性を持っている(この抗生剤では死なない)マイコプラズマが増えているのです。そのため、ニューキノロンという、より幅広く色々な細菌をやっつけられる抗生剤を使うことになります。ここで問題は、多く使えば使うほどこの強力な抗生剤に対しても耐性ができる可能性がでてくることです。また、一部のものを除いて小児の患者さんには使いにくい(添付文書では使ってはいけない)こともあります。さらにご多分に漏れず、この抗生剤も流通が滞っていて、使いたいけど薬局に置いていないというケースもあります。

つまり、治療についてもいろいろな状況を鑑みて行わないといけないため、この咳の大流行に、クリニックはてんてこ舞いというわけです。

 

では、どんな時に受診すればいいの?

辛ければ、遠慮なく、来院してください。ただ、咳止めを出したり、抗生剤を出したり、吸入ステロイドを出したり、色々と工夫をしても、やっぱり時間をかけて良くなっているパターンはとても多いです。

また、クリニックに受診されて、長い時間、お待たせすることもしばしばとなっています。

目安としては、熱が数日下がらない咳、熱は下がったけど、夜も咳で何度も起きてしまう、日に日に咳が悪化している、痰に血が混じるなどといった症状があれば受診をぜひ、検討してみてください。

 

はやく、咳の風邪の流行が収束するといいですね。

咳が出ている方は、やっぱり、マスク、してきてくださいね。以上です。