一昨日、川崎市の高齢者インフルエンザワクチン接種事業の説明会に参加してきました。
そこで、けいゆう病院の菅谷 憲夫先生の講演を聞いてきました。
「インフルエンザ対策 高ウイルス薬とワクチン」というお話です。
今回は、この講演で聞いてきた内容について書いてみたいと思います。
一昨年、去年と、新型インフルエンザが騒がれましたね。で、そろそろその新型インフルエンザに対する世界各国の治療などの対応、死亡者数、もろもろのデータが出てくるようになりました。
昨日の講演では、その辺の比較から、話をされていました。
2009年の新型インフルエンザ(H1N1)の流行による死亡
・アメリカでは12000人が死亡し、1280人の小児が死亡
・一方、日本の死亡率は極めて低く200人の死亡にとどまっていた(小児は40人)
この極端な死亡数の差は・・・
→タミフルやリレンザといった抗ウイルス薬を早期に投与した結果、インフルエンザの重症化を防ぐことが出来たため
インフルエンザ関連の死亡原因
・欧米諸国の大半の死亡は、インフルエンザ発症後4-5日で起きるウイルス性肺炎が原因急激に重症化し、またインフルエンザが発症した当初には、どんな人が重症化するか、わからない。この重症肺炎は肺炎が起きてからタミフルなどを使っても全く効果がなし
インフルエンザが発症した早期に、タミフルなどを使うことによって、重症肺炎を防止出来るという結果だった。
・一方、日本では、この重症肺炎が発生なし
→ただし、軽症の健康な小児、成人までインフルエンザにかかった全員に、抗ウイルス薬を投与するということが出来るのは、多分、世界で日本しか出来ない・・・
日本産婦人科学会の英断
日本では産婦人科学会の英断により、妊婦にも積極的に抗ウイルス薬の投与を行なった。その結果、日本では、N1H1による、妊婦の死亡はゼロだった!
これに対しては、国際学会で、他の国の研究者から、半分真顔で、「日本は少子化が進んで、妊婦がいないから、死亡もないのでは?」という話も出たらしい。
タミフル耐性の問題
抗ウイルス薬を使うと、耐性菌の話が問題になります。しかし、実際に耐性が問題になるのは、それまでにタミフル投与を行なっていない人から、耐性ウイルスが検出された場合(これを自然耐性という)で、この場合には、世界中に広がっていく可能性があります。一方、タミフルを投与している人から耐性ウイルスが見つかっても、このウイルスは増殖が悪く、次の人に感染した時にはもう耐性ウイルスは消失しているという経過を辿ります。
→日本で今までに治療により出現した耐性ウイルスの人から人への感染例の報告はほとんどなく、重症化した例の報告もない。
インフルエンザに対するワクチンの効果
・以前の日本における学童集団ワクチン接種を振り返ってみると、集団接種をすることによって、学級閉鎖は減っていた。
・しかし、それ以上に影響が大きかったのは、集団接種をしている時代は、インフルエンザによる高齢者の死亡が減っていたということ。
→学童のインフルエンザ予防接種によってインフルエンザの蔓延を防ぎ、その結果、高齢者のインフルエンザによる死亡を減らしていた。
・また、学童集団接種をしていた時代は、1歳から4歳の幼児のインフルエンザ脳症による死亡が減少するという結果が得られていた。
→学童のインフルエンザ予防接種によってインフルエンザの蔓延を防ぎ、その結果、幼児のインフルエンザによる死亡を減らしていた。
つまりは、ワクチンは、その人個人を防衛するのではなく、伝染防止効果により、集団防衛に役立つということ。もちろん、ワクチンによってその個人が感染しても、軽症で終わる可能性があるというのは、ありますが。
まあ、こんな話でした。
それ以外にも、インフルエンザ脳症には、日本人では遺伝子多型が関与しているのでは、とか、抗インフルエンザ薬の種類についての話なども出ていました。
まとめると、
やっぱりインフルエンザにおいては、早期に抗ウイルス薬を使ったほうがいい。
ワクチンは、社会全体での好影響あり。ただし、死亡率を下げる効果はないだろう。
そんなところだったでしょうか。
そめクリの日常